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№27 友人のある決断・事業譲渡&承継

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H20年4月25日

私には「生涯の友」がいる。先日、今は北海道在の彼を訪れた。煉瓦造りの元倉庫を改造した北国のレストランで旨い大雪地ビール(銘柄:ケラピルカ・ピルスナー)とジンギスカンに舌鼓を打ち、過ぎてしまえば楽しい今でも鮮明に覚えている当時の苦しかった尽きない想い出話に暫しの時間を忘れる。

亡父経営の製紙会社を、父は昭和45年、岡山県津山市に今思えば無謀とも思える工場移転を図った。関東にあった前工場周辺の住宅化に伴い排水騒音規制が強化されたためである。当時の言葉では「工場疎開」である。しかし資金、人材、技術、そして経営力も乏しく過大借入金によって昭和52年数十億円の総負債額で倒産した。

当時の倒産は、現在と異なり、法律不整備のためか、好からぬ整理屋(ヤクザ系)の格好の餌食となり、経営者は失敗者として烙印を押され経済界から追放される時代であったと思う。そのような中で父は再建を強く願い、破産法(現在は大幅改正された)、和議法(これも大幅改正され民事再生法)に頼らない債権者との話合いによる任意整理を決断した。

一債権者は原材料、製品等の流動資産を持出す目的で真っ先に大型トラック数台を乗りつけた。また複数の好からぬ整理屋は一部の債権者から手形を買受け裏書して一債権者として当り前のように会社に乗込んで来る。

正に修羅場と化した状況で私を含めた経営陣は一歩も逃げず向合い、個々の債権者に対しお詫びと再建協力を粘り強く伏してお願いした。一方全繊同盟傘下の労働組合は労務優先債権と職場を守るため原材料・製品等の流動資産が搬出されないように体を張って守り抜いた。

その時、彼は工場次長という立場で従業員を纏め工場を守り再建のため共に戦ってくれた私の恩人である。(なお同工場は大手製紙会社の一工場として現在操業中)

以上のことは32年前、私が32歳のときの話である。

時代は変遷し、ときは現代。

彼は数年前まで大手飲料会社を得意先とする中堅運送会社の社長をしていた。しかし同社はバブル期に購入した不動産の借入負担、排ガス規制強化による望まない新車買換え、軽油価格UP、及び得意先の物流改革による値下げ等のため売上減&コスト増により10年程前から経営難に陥っていた。

彼が下した決断は「事業譲渡」。つまり従業員と事業(仕事)を新設会社に移管し仕事の継続を図り、現会社は破産法で処理するという手法である。税法民法等の法律問題をクリアすべく約1年に亘る周到な準備のもと、「X.day」を定め実行した。無論連帯保証人である家族の問題もあった。当然のことながら私もお手伝いをした。また優秀な弁護士にも助けられ、再生した新会社は規模を縮小したが、彼らが今までに築いた得意先・仕入先との信頼関係のもと借入金ゼロで現在頑張りやり抜いている。

この問題に区切りと目途の立った昨年、彼は退任し、新会社を義弟に譲り故郷である北海道に移り住んだ。

このように、互いに苦しい時期を経た仲間同士、彼とは長い長い心の通った付合いを続けている

※追記

昨今事業承継、つまり後継者問題という問題にぶち当る。

責任のみを負い、時間に関係なく働き、資金繰りに追われ自分の給与も碌に取らず、銀行返済と従業員の給与賞与のためだけに一生懸命働いている社長である親の姿を見て、息子は親の会社を継がず大手会社のサラリーマン等の他の道を選ぶのは当然の成り行きである。

昨今「息子にキレイな会社を残すために必要な本」という書籍が出版されている。「借金過大な会社を息子に引き継がせて、息子に過大な借金という重荷を背負わせるのではなく、借金の問題を解決した「キレイな会社」にして息子(次の世代)に事業承継してもらいたい」という主旨の本です。一方政府は遅ればせながら相続における税法で80%軽減措置を打ち出ている。

つまり債務超過の会社の場合、企業分割、事業譲渡等の抜本的手法である「会社の法的加工」(※私の勝手表現)を施し、これらの負担を切り離さなければ本当の意味での健全な会社を譲ったことにならないと思う。

事業のみを移管した新設の会社を息子に承継させ責任と負担範囲を明確にし、親の過大な債務をそのまま息子に継がせないことが肝要であると痛感する。でなければ息子は重荷を負い過ぎる。

この友人の事例も同様である。製紙に区切りを付けた彼は、義父経営の運送会社に勤めた。10年前、義父の突然の死で急遽社長に就任したが、時既に遅く、義父が残したバブル期購入不動産の過大な不良債務を負ったまま引継いだため、これが倒産の大きな要因となったのです。しかし再生を図ろうという彼の決断は適切であった上に、既に次の後継者(義弟の長男)も戻り次期社長として育ちつつある。

記:大森孝成

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