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№30 ある法人売買 M&A

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H20.7/21

ある法人売買(株式売買)について

日本の上場企業の100%子会社を海外企業に法人譲渡する契約調印に漕ぎ着けました。

私としては、相当以前に、父から継承した製紙会社を大手製紙会社に株式譲渡し経営権を譲りましたが、買主側仲介の立場で纏めたことは始めての経験で緊張の連続でした。

当該会社については公認会計士団のもと公正な立場で会計財務・税務に関し精査(デューデリジェンス)され、一方弁護士団により当該会社が交わしている諸々の契約書内容、労働内容等の法務面で精査が行なわれました。

売主から与えられた開示期間はたった数日間の短期作業でしたが、調査後、約1週間の予定日に次々と報告書が上がってくるという手際の良い作業には感服致しました。(ノートパソコンのお陰??)

報告書受領からが大変でした。これらの報告書をもとに、買主さん並びに先生方&私らは、1週間に亘る連日連夜、議論を交わしました。

海外企業であるため、その出先機関である日本法人社長として、まずご自身の内容把握から始まり、そして海外本社への報告→本社からの質問状→回答を繰り返した関係でこのような長時間を要したわけです。加えて翻訳や通訳という難問もありました。

このように毎日がヘトヘトになる位の緊迫感で物事は進みました。

幸い大きな齟齬もなく、本社オーナー来日のもと無事調印の運びとなり安堵しました。

一番の問題点は、株式譲渡契約における瑕疵並びに表明責任です。今回売主は上場会社の連結子会社なので大きな経理的管理的不安はない筈ですが、買主は海外企業です。その点の補償(損害賠償責任)並びに対等な契約(メンツ)にこだわり、破談を覚悟したのも一度ではありませんでした。

引渡しと残金決済は1ヶ月後です。これまでの間に売主としてはプレス発表、子会社社員に対する発表&買主紹介を含めた説明会、仕入先に対する説明等、盛り沢山の作業をこなすことになります。

一方、買主側も売主に協力して沢山の業務引継ぎ作業を要します。

私としても完全な引渡しが済み軌道に乗るまでは精一杯務め上げるつもりです。

※コメント:時代は「大きく変わった」という印象を改めて実感した今回の法人売買でした。

私の場合の昭和50年代とは違い、法人売買における世間の意識、労働者権利意識、監査方法等が正に様変わりしていました

当時買主は株式の力による会社乗っ取り屋的ダーティイメージがありましたが、平成4年バブル崩壊後、M&A(合併・売買)は当り前の一手法で余り抵抗感なく受入れられることを実感しました。また当時は公認会計士の認知度も低い時代でしたが、コンプライアンス(法令遵守)が叫ばれている昨今、「公正で独立した公認会計士」という認識のもと信頼度が増していることをも実感できました。

現に私のときは、公認会計士を当てにせず買主側の経理役員が自ら部下を引連れ財務会計を精査し、結果私の会社の株価は1円、旧会社保有の土地建物機械設備は○○億円と評価され、お粗末ながら買主の言い値で銀行の了解を経て決定してしまいました。

また当時は労働者権利意識が強く、契約案条項に「買主の労働条件は現行条件と同等若しくは上回ること」の記載があるにも拘らず、組合はこの譲渡に猛反撥しました。その理由は組合の独自調査?で買主側会社の労務政策が厳しいという譲渡後の不安に加えて一取締役がその不安を助長したこともあり、加担した一取締役の名で旧商法「商法における会社整理」条項を利用し提訴されるという一場面があるなど、法人譲渡が経営者や株主だけの意思だけではままならない難しい時代でもあったと感じます。

また、当然のことではありますが、代金の流れも売却物が担保物件ですので、右から左へ素通り!全部を弁済のため銀行へ、債務者である私の仕事は契約書等諸々の書類に押印するだけで、苦労した割には、経営責任者としてつまらなくもあり寂しくもあった記憶が鮮明に残っています。

簿外債務についても、個人企業でかつ債務超過では「簿外債務(二重帳簿)があって当り前」と見られる時代でしたので、その疑いから、私の親兄弟を含めその補償のため数年間連帯責任を負わされるという惨憺たる法人譲渡でした。

                             記:大森孝成

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